プレートテクトニクスと地球膨張説(前編)
- campusviridis2018
- 2018年7月3日
- 読了時間: 4分
さて,今のところ地球の進化については,プレートテクトニクス理論による説明が広く受け入れられています.
地球の表層は十数枚の硬い板(プレート)状に分かれていて,こうしたプレートはその下の軟らかい層の上をゆっくりと(年間数cmぐらい)水平方向に運動している.プレート同士がぶつかり合うと,片方のプレートがもう片方のプレートの下にもぐり込んで消滅してしまう.消滅した分のプレートは,海底にある中央海嶺で,マントルから供給されておぎなわれる.
これがプレートテクトニクスの基本です.海底を含めた地球上のあらゆる地形や現象はこのプレートテクトニクスによって説明され,現代の地球科学では基礎中の基礎といった概念にもなっています.
地球史をこのプレートテクトニクスから考えると,地球上の大陸は常に運動し続け,分散と集合を繰り返してきたと説明できます.
現在のプレートの動きを逆回しにすると,いまから2億5500万年前の地球上には,パンゲアと呼ばれるひと塊の超大陸が出現します.パンゲアの形成前にも大陸の離合集散は繰り返されていて,約19億年前にはヌーナ,約10億年前にはロディニアと名付けられる超大陸がそれぞれ存在していたと考えられています.
ちなみに,現在ばらばらに分かれている大陸も同じく,将来には再び集合の方向に転じて,2億年後から2億5000万年後には太平洋が消滅してまた新たな超大陸を形成すると推測されています.

プレートテクトニクスの起源となった考え方には,ドイツの気象学者A. ウェゲナーによる大陸移動説がありました.
地球の古環境を研究していたウェゲナーは,南米,アフリカ,インド,オーストラリアという現在の大陸間をまたいだ地質や化石の分布に着目し,かつてこれらの大陸はひとまとまりであったのではないかと提唱したのです.1915年にウェゲナーが『大陸と海洋の起源』を著した当時は,大陸を動かす原動力を説明できなかったために支持を集められなかったのですが,後に古地磁気調査によって証明される海洋底拡大説と統合することによって20世紀中ごろには広く認められることとなりました.
ところでこの時代,大陸移動説に反駁した地質学者たちは,代わりに「陸橋説」と呼ばれる仮説を提示していました.大西洋やインド洋には,現在は沈んでしまった陸地がかつて存在していたのだと主張して,先述した大陸間の古生物の分布などを説明しようとしたのです.結局,大陸移動説と同様に陸橋説もその水没のメカニズムをうまく説明できなかったわけですが,当時の人たちとしては横に動くよりは縦に動いた方がまだ納得できるという感覚だったのでしょうか.ともあれ,大陸移動説は従来の「固定的地球観」を覆し,その後のプレートテクトニクスの繁栄の礎を築くこととなったのです.
しかし,このウェゲナーの発見,「大陸はかつて一つであった」,この発想から生まれた学説は実はプレートテクトニクスだけではなかったのです.「大陸を動かさずに大陸を分裂させる?」禅問答というか,一休さんのとんちのような問題ですが,とある地質学者たちはここに驚くべき発想をしたのです.それが,プレートテクトニクス説とほぼ同時期に誕生した,地球膨張説でした.(続く)
こんにちは.記念すべき連載第一回!といっても導入部だけでほとんど一般常識みたいなところしか書けませんでしたが.まあ,予告だけしていつまでたっても始まらないってのはみっともないので.前後編に分割して取り急ぎ投稿した次第であります.後編(本編)はもちろん全くできておりません.
初回は本題のお話に入る前に,模範解答というか,地球膨張説を破り去った時代の勝者,プレートテクトニクス理論の基本と歴史のおさらいということでした.今でこそみんな当然のように受け入れてますけど,世界は世界のままの世界であるというそれまでの,ある意味とっても安心できる世界観をぶち壊された当時の衝撃はどんなものだったんでしょう.ちょっと前の種の起源とか相対性理論とかの衝撃である程度耐性はできていたのかな.
さて,大陸移動説とプレートテクトニクス(正確に言うとマントル対流説)ってほとんど同一視されることも多いんですけど,実はその間にはワンクッションあって,理論の発展もそのまま直線上にあったわけではないんだよ.ということを後編から書いていこうかなと思っています.というわけで次回は「第1回『プレートテクトニクスと地球膨張説』後編:もう一つの大陸移動説」です.時期は未定!
〈J.K.〉
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